2011年6月4日土曜日

『ノルウェイの森』 映画批評

村上春樹の『ノルウェイの森』が映画化された。初めに断っておくと、私はこの作家の文章の巧みさには惹きつけられる反面、好みでないし、理解も共感もできない。だけどそろそろ期末試験で、文体論のレポートのテーマとして書きやすかったので、勉強のため観に行ってきた。

村上ファンが多いここフランス。5月4日に映画公開されたばかりというのに、どんどん上映会場と回数が減らされていく。フランスメディアの映画の総合評価も4つ星中2つ平均といまいち。慌ててひとりで観に行った。

そんな前評判もあってか、期待せずに観たけれど、観てみて納得。うーん、残念ながら、映画としては二流以下だ。(ファンの人いたら、ごめんなさい。しろうとの戯言と思って読み流してください。) 日本の風景美は美しいし、60年代の雰囲気も上手に再現されていて、タイムスリップした気分にさせてくれる。でも、映像美がやたらと目につく反面、そこに生きる人々の心情が不自然なまでに、ドロドロと描かれすぎている。

たとえば主人公の病気の彼女・直子役の菊池凛子の演技はあまりにリアルで、まるでサスペンスドラマか、幽霊屋敷に入った時に背筋が冷たくなる類いの薄気味悪さを感じた。彼女は小説の本当の意味での主人公でありながら、若者のもつ可憐さのかけらもないうえに、美しくもない。あんなに力強い精神病患者は実際、見たことがない。自殺シーンも、どうして爽やかに美しく痛々しく見せられなかったのだろう。おどろおどろしいホラー映画のワンシーンのようで、彼女の力強い叫び声、泣き声には青春時代の自分を重ね合わせるどころか、苦笑がしらけへと変わってしまい、途中で何度も席を立ちたくなった。

人間の本質に近いものを見せたかったのだろうけれど、見せられれば見せられるほどに引いてしまう。小説の軽妙なタッチに比べ、全体に意匠が凝らされすぎていて映画として重たい。俳優たちのセリフもどことなく浮いていて、ぎこちない。映像美と登場人物の心情の吐露が、アンバランスで居心地を悪くさせる。

愛とか死とかいう重たいテーマに、どのように透明感をもって魅せられるか、がこの映画化に際して監督の腕の見せどころだったと思うのだけれど、余計な解釈や意気込みが入り込みすぎてしまったのだろうか。バランスをとり、陰影をつけつつ、上手にまとめてほしかった。死や愛についてさらりと描くのが上手な村上なのに、この映画では重たくて目もあてられない。なんだか息苦しくなって、映画館から出て空を見上げたら、その単純な青さにほっとした。

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